短歌・詩・小説・映画
矢印の根元を〈過去〉とみなしますそういうノリで人を見てます 改行のたびに呼吸がしづらくて文字にも重力があるんだな 正しさは怒りと同化 透過する自意識たちがどうかしていた ゆらゆらと燻る善が食い尽くし滅んでいった寓話のさわり 夏花火の度に探すチャ…
日常を切り取るために捨てられたそのアーカイブを探すのが夢 なみなみと注いだ君がこぼしたら、隣でぎゅっと乾かしてやる 「ぽったり」と形容してた 2月末、いきなり暑い日の温もりを 生命はシンプルな手間で繋いでく ザクザクと切る折込クーポン 桃色がリア…
スクロール 明滅してる起業家の刃渡り5kmの顔 新聞の裏で刺された血塗れの誰かは〈誰か〉であり続ける やさしさは他人の定規の上に立つ ミリ単位でも調整できる 5番線 黄色い線の内側でたまたま立っていただけと言う もう二度とオーダーメイドの憂鬱に触るな…
「こういうことがあった辛くてたまらないもう死にたい死にたい死にたいって助走があるわけじゃなくて、ふと、なんか、別にもういっか、ってなる瞬間。」 先月発売された朝井リョウの最新作、『どうしても生きてる』という短編集の中の「健やかな論理」という…
どしゃ降りの雨に打たれているとき、すごくちっぽけな世界が、途方もないくらい大きな世界に繋がっていることに、気がつくことがある。 守り抜いてきた小さな自分の世界が不意に壊され、耳をつんざくような雷鳴と身を凍えさすような寒風が、自分の心の隙間を…
生と死の狭間をたゆたっていくように、境界をぼかしていくグラデーションのような陽射しの夏の日、迎え火のようにゆらゆらと揺れる街燈が墓標のごとく並ぶ午前3時。生き抜いた蝉の残骸が散らばっていて、蜃気楼に近い生命のうねりが押し寄せてくる。 半袖の…
一番にとっていたわたしの席 窓ぎわの左端 あなたを見ていた 頬杖つきながら 風のように時間は過ぎていった あなたから呼ばれることが それだけで、こんなにうれしい なぜかしら ねえ、そんな季節があってもよかったと 今はそう思えるの きらきら 揺れる あ…
たとえば君が歌ったそのメロディーが 音のシャワーを浴びるように心地がいいから 僕は一つ一つ色をつけてゆきたい いつ見返しても笑えるように 少し早足で歩いた夏を急かすよう ひどく遠回りしながら近道する季節 ほらね一つ二つ足を踏み出しながら 週末の魔…
めまぐるしく過ぎていく春の日に、ぼんやりとのどかに立ちすくんでいた花が涙をこぼす頃に居なくなってしまった人のことを思い出す。 あっという間に散っていく花びらは色々なものに喩えられる。桜がシャワーのように舞っている景色はきっと誰もが好きだと思…
「おめでとう、新しい場で沢山の思い出作って」(僕とふたりで) 新しい人がたくさん流れ込む記憶の中に居座る機能 春風がいたずらっぽく君の髪宛に花びら届けてきたので 白抜きの広告みたいに焼き付けた いずれ散りゆく花びらならば 春、にじむ気持ちを歌うチ…
もう、信頼をぶっ壊すことは、しない
「またね」という別れの言葉がある。これから春が芽吹き始める。桃色のじゅうたんの上で、たくさんの「またね」が飛び交うのだろう。 「さよなら」だと寂しすぎるから、また会いたいと強く願うから、親しい人と交わされる、「またね」という約束。 僕たちは…
夕方から楽しみな予定しか入っていない日に昼間まで寝て、だらっと過ごしている瞬間の、ゆっくりと流れている幸せをつまみ食いするような感覚が、ずっと続けばいいなと思う。 太陽の光が窓から差し込んできて、空気が粒のように輪郭を持った冬の昼下がりの中…
窓を開けたら吹き込む風に ひらりと舞うのは温もりか 目覚めた隣 微笑む朝陽 今年は幻 見てしまう からっぽの部屋 別れを告げて ガタゴト揺れてく日常が まるであの日の幸せまでも 置き去りにしたようで寂しくて 街の色が変わってくごとに 霞んでいくのが怖…
昇降口の扉をガラッと開けたときの、こもったような匂いと、冬の朝に散らばっている埃と、弾けたような一筋の光。名前のつけようもないスナップ写真みたいな一瞬が、パラパラとこぼれながら続いていく。きっと切り取られて初めて写真と気づくような、壊れそ…
電子機器に弱い母親のスマホの写真をパソコンに取り込んでいたとき、パソコンに残っている2001年からの写真を見返していた。 アルバムに大量の写真が残っている兄とは違って、次男は残される写真が少なくなりがちで、時代の流れもあって僕の写真は主にデジタ…
かなしみが深く深く私の身体を沈めてしまいそうなとき、ただひとつ、私を助けてくれるのは、そんなあなたでいいよ、という無条件の肯定だ。ここにいるだけでいいんだよ、というただひとつの真理を、ずっと口にしてくれることだ。 なにか、信じられる風景や人…
ディスプレイ映る時計のゾロ目とか わたしと同じイニシャルだとか 深夜には爆発させる絶対に だからひとまずなにか食べよう とりあえず 明日の朝は来ないから わたしが止めてみせるから、ほら ぽろぽろとこぼれる白に 「ああ、なんだ」ととぼけた顔で 今日も…
彼は、伏し目がちに喋る人だった。 口数は少なくても、言葉をひとつひとつ大切に選んでいることが分かるから、安心して話を聞いていることが出来る。 きっと、彼は少しだけ生きるのに不器用なだけだったのだ。 よく晴れた日、向こうのビルや街路樹の輪郭がス…
こんな歌詞を書ける人、地球上のどこを探しても草野マサムネしかいないと思う。 スピッツ『8823』の二番のサビに突然ぶち込まれるこのフレーズ。 「君を不幸にできるのは宇宙でただ一人だけ」 曲がりなりにも趣味で作詞をやっている私ならおそらく、「君を幸…
窓ガラスに浮かぶ雫が秋を運んできた夜、白灯に包まれたレモンティーを飲みながら、僕は机に向かっていた。視線の先には二枚の紙切れが置かれている。手書きの文字が今にも踊り出しそうに書かれた手紙の、その行間に詰められたいたずらっぽい笑顔が思い出さ…
何もかも忘れられなくていいし、何もかも捨てられなくていい。 明日また会えるかのようにさよならを言えたなら。笑顔を覚えておくために、おどけてみせよう。
細田守監督作品『未来のミライ』 先日見てきました。細田守監督作品は欠かさず見ているので、この映画の公開が発表されたときからずっと楽しみにしていました。 「未来のミライ」予告 - YouTube しかし、この作品が公開されてみると賛否両論の嵐。「期待して…
白い半袖シャツの袖を折り曲げ笑う、夏の合図も見慣れた頃に 引きずったあとの靴底と、カタカタ鳴るのはキーホルダー 明日の青を限界まで希釈し続けたみたいな空 コロコロ転がるサイダーのビー玉を集めた不意打ちの海 始発に飛び乗り朝を迎え撃つ、そんなの…
壊れるくらい、あなたが好きでした。 映画の感想というブログっぽいことを初めてやってみます。 一発目は今日見た映画、『ナラタージュ』から。 この映画の上映は2017年10月7日。行定勲監督作品。島本理生さんの同名の小説が原作。出演は松本潤さん、有村架…