ノートの端っこ、ひこうき雲

ひと夏の思い出、には留まらせたくない。

日常のエッセイ

ひとりでいること

ぼーっとしているときによく思い出す景色がある。 それは私が通っていた中学校への通学路の道中で、私がただひとり佇んでいる光景である。私の母校の中学の周りは土地の関係で坂道が多く、私が思い出す場所は、数々の下り坂の終点を結ぶ谷のようなところであ…

少しだけ早いバイバイ

私たちの世界の外からやってきたウイルスによって、突然日常が葬り去られた学生たちの声を聞いていると、日常の途方もないきらめきみたいなものを、感じずにはいられない。 いま、新型ウイルスの感染拡大を防ぐために、全国の学生たちには突然春休みが訪れて…

僕もコーヒーが飲めたい

コーヒーが飲めるってズルいよな。なんでってなんかカッコいいじゃないですか。 例えばカフェに入って優雅に読書をするというわけのわからないことを僕も年に3,4回するわけだけど、そこでコーヒー頼んでみるのね。だけど本当に飲めねえんだわ。コーヒー好き…

インスタのストーリーを見ている人の真顔写真集を出したい

この文章は電車で書いているが、目の前に座っているおじさまがとても良い。髪の毛をガチガチに固めてサイズがぴったりのシャツを着たダンディーなおじさまが、スマホを見ながらめちゃくちゃ笑っているのがめちゃくちゃ良い。気になって仕方ない。何を見てい…

先日、部屋を掃除したときに、本棚に置いてある小さな紙袋の存在を久しぶりに思い出した。その袋の中には、お菓子の箱がいくつか入っている。何の変哲もないお菓子の箱が、宝箱に変わった瞬間のことを思い出した。 高校時代に私が所属していた部活は、誕生月…

フローズン・カメレオン

多数決をとりますって言って、皆が目を伏せて挙手するやつ、あったと思う。でも結果を集計する人は、誰がどっちに手を挙げているか分かるわけで、僕は怖かった。自分一人だけが挙げていたらどうしようって怖かった。 学校の夏休みが終わった9月、「運動会の…

Blanket

夕方から楽しみな予定しか入っていない日に昼間まで寝て、だらっと過ごしている瞬間の、ゆっくりと流れている幸せをつまみ食いするような感覚が、ずっと続けばいいなと思う。 太陽の光が窓から差し込んできて、空気が粒のように輪郭を持った冬の昼下がりの中…

1998→

大学二年生になって印象に残っているのは、後輩たちに2000年生まれが紛れ込んでいたことだ。つまり世の中の高校生は大部分が2000年以降に生まれていることになる。全国の高校では1○○○年生まれは絶滅危惧種だし、小中学校では既に絶滅した。 昨年、世界で最後…

ベストアルバムから落選すること

2時間目が始まる廊下で自分の好きな語感の言葉を教えてくれた人は今、華やかな舞台に立っている。3時間目が始まるロッカーの中を少し整理しながら、ロッカーの汚さと部屋の汚さって関係あるのかね、こんな人間性だと思われたくはないものだねと話した人は今…

朝日の香り

よく陽射しが差し込んだ清々しい朝、無駄に意識の高かった昨夜の僕がセットしたアラームが部屋中に鳴る。鼓膜に「夢ならばどれほど良かったでしょう」というフレーズが流れ込んでくる。なぜ米津玄師の「Lemon」を目覚ましソングに選定したのか、昨夜の僕は気…

未来のあなたと交差点

自分の友達と別の友達が実は繋がっていた、というのはよくある話である。同じ高校の出身だったり、地元が同じだったり、今まで私が聞いた話で一番すごいと思ったのは、自分と同じ苗字だと思っていた友達が幼少期に会ったっきりの親戚だったというものもある。…

やっぱり短すぎる夏だったけど

僕の大学の夏休みは今日で終わり、明日から秋学期の授業が始まる。人生の夏休みの中でも一番楽しい大学二年の夏休み。思い返してみると特に大きい何かをしたわけじゃないけれど、一つ一つの思い出が最高だったので人生最高の夏に出来たと思う。少し振り返っ…

帰り道は茜空

「何故あなたが時計をチラッとみるたび泣きそうな気分になるの?」 松田聖子の代表曲「赤いスイートピー」の中の歌詞である。邦楽全体で考えても指折りの歌詞だと思う。この一節ほどに「帰る」ことの切なさと胸が張り裂けそうになる苦しさを表現したものはな…

虹をかける天才

私は自他共に認める雨男である。 ハレの日である入学式や卒業式、たのしい遠足や修学旅行も大体雨だったし、荷物を運ぶのが大変な引っ越しの日も雨、ディズニーランドも雨景色を見た日の方が多い。私が出かける日は空模様がよろしくない日が多い。私の上を一…

あらかじめ!ステーキ

存在を知っていながら、度々その店の前を通っていながら、まだ一度も入ったことがない飲食店がある。「いきなりステーキ」である。このお店、今ググってみたら正式名称は「いきなり!ステーキ」だった。これは一般正解率10%切る。カズレーザーでも間違える。…

青春はおでんとアイスを蛇行する

「帰りにコンビニでアイス買って食べよう」が「おでん買わない?」に変わるのを3回繰り返していたら、あっという間に僕たちの帰り道はバラバラになってしまった。アイス、おでん、アイス、おでん、アイス、おでんで卒業。3年間って、こんなもん。0歳から3歳…

たった一度のにらめっこ

京葉線がまた止まった。 よくある話なのである。東京から葛西臨海公園駅、舞浜など錚々たるメンバーを網羅する京葉線は東京湾岸を走り続けるため、強風によってすぐにダイヤが乱れ狂う。風が吹けば京葉線が止まる。しかもここら辺を走っている電車は他にない…

望郷

「故郷」というものが私にはない。 千葉で生まれ千葉で育ち今も千葉に住んでいるので、生まれ育った地を離れたことは一度もない。地元の友達にはすぐに会える。 大学が東京にあるから東京を動くことも多くなったが、それでも千葉が私のルーツだと言えるし、…

線路の先に

私は家から大学まで往復3時間かけて通っている。一日の8分の1を電車で過ごしていることになる。「辛くないの」とか「もっと近いところに住まないの」とよく聞かれるけれども、電車に揺られているだけで時間が過ぎ去っていくのは割と心地よいので、しばら…