ノートの端っこ、ひこうき雲

ひと夏の思い出、には留まらせたくない。

映画『ナラタージュ』の感想【ネタバレなし】—「静かな共鳴」の連続

壊れるくらい、あなたが好きでした。

 

映画の感想というブログっぽいことを初めてやってみます。

一発目は今日見た映画、『ナラタージュ』から。

 

この映画の上映は2017年10月7日。行定勲監督作品。島本理生さんの同名の小説が原作。出演は松本潤さん、有村架純さん、坂口健太郎さん等です。

 

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周知の通り私は有村架純さんの大ファンなので、もちろんこの作品を映画館で観ました。日曜の夜に男友達と二人で観に行ったのですが、内容が胸にずっしりとくる内容だったので鑑賞後は二人で「明日大学行きたくねーな」と連呼しながら帰路についたのを覚えています。これは日曜夜に見るものではなかった。カップルもちょいちょい見に来てたしね。

 

そもそも、私は映画館で観た映画の感想をすぐ言葉にするのがとても苦手で、映画館を出ると大抵、語彙力が紙風船のようにしぼんでしまうのです。むずくね?細部までの観察や全体の構造を踏まえた映画全体の把握を一回見ただけで行える能力は私にはありません。

 

そこで、これはちゃんと感想を言葉にしたい作品だなと思ったので買っちゃいました!

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Blu-ray 豪華版!

 

これで映画をじっくり見ることができたので感想が書けます~ネタバレしない程度に!

 

 

作品全体を通して流れるアンニュイな雰囲気

この映画を一言で表せと言われたら「アンニュイ」と答えます。本編は140分と長めなのですが、終始アンニュイとしか言いようがない雰囲気で進行していきます。雨や曇り、夜のシーンが多めで暗い。主演の松本潤さんが演じる葉山貴司も何を考えているのか分かりづらいキャラクターでつかみどころがない。登場人物の家の照明も総じてなんか暗い。なので、人によっては、盛り上がりに欠ける退屈な映画だと思ってしまうかもしれません。

それでも、アンニュイという言葉がネガティブなイメージと結びつかないのと同じように、この独特の雰囲気に見る者を引き込ませる力がある。「静かなる動」とでも呼べばいいのか、この「静」は有村架純さん演じる工藤泉の心の中の「動」をコントラストとして引き立たせる力があるように感じます。

大きく目立った出来事はあまり起きない。だからこそ各所であふれ出す「壊れるくらい」の愛の響きが印象に残るのです。

 

「恋」がちょっとずつ狂わせていく

この映画、明確な「悪者」は存在しません。でもちょっとずつ狂っていく人が多い。そんな印象を持ちました。登場人物はみんな優しい性格なのですが、彼らが交わり合うと複雑な心の働きが生まれてちょっとずつおかしな行動を取ってしまう。「こんなはずではなかった」と後になって思う取り返しのつかない事態にまで進んでしまう。

これ、とても繊細に現実的な恋愛を描いているなと思いました。この作品には「好きだった人を思い出す」という宣伝文句もありましたが、まさに見る者の心の奥底にしまわれた思い出の引き出しをそっと開けるようなシーンの連続。映画を見てて抱くのは、「ああ~あるあるだわ」といった「共感」ではなく、じっと過去と向き合わないと浮かび出てこない「あのときちょっとおかしかった自分」が重なり合っていくような「共鳴」に近いものだと思います。だからこそ、シーンの一つ一つが心を揺り動かして離さないし、私を大学登校拒否の気持ちにさせたのでしょう(ちゃんと行きました)。

 

「音」と「シンボル」へのこだわり

ネタバレになるかもしれないので詳しくは言えないのですが、この作品は雨の他にもある部分を映したシーンが多いなと感じました。映画に詳しくないので専門用語は分かりませんが「シンボル」と言えばいいのか、その作品を象徴するような「ある部分」へのこだわり。見ていただければわかると思います。

また、雨の音をよく聞きましたね。登場人物の話す声も小さく、難聴の私はセリフを映画館で聞き取れないという事態にも陥りましたが(映画館でこれはさすがに初めてでした)、無駄な音が一切入っていない、演出へのこだわりも感じました。

ちなみにタイトルの「ナラタージュ」は「映画などで、ある人物の語りや回想によって過去を再現する手法」(デジタル大辞泉)という意味で、このタイトル通り、映画は頻繁に時系列が入れ替わる回想の形式を取っています。ここにも映画構成へのこだわりが見られます。

 

そして音といえば主題歌もいいですね。映画のエンドロールの途中で帰る人を理解できないまま人生を終えそうな私ですが、adieuさんが歌う主題歌「ナラタージュ」が流れるエンドロールが、映画鑑賞後の体にとどめを優しく刺してきました。RADWIMPS野田洋次郎さんが作詞作曲を手掛けたことでも話題を集めたこの曲、ぜひ聞いてみてください。

 

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えー、ここまで書いてきて言うのもなんですが、ネタバレなしで感想を書くのって結構ムズイということがわかりました。考察したがりマンの私はやっぱり本編のあらすじに言及しないと広げられない話もあるので、またネタバレありバージョンを書くかもしれぬ。

 

ひとまず、

読んでいただきありがとうございました。