ノートの端っこ、ひこうき雲

ひと夏の思い出、には留まらせたくない。

Crystallize

3月に母校の高校や大学の周辺を歩く機会があった。変わったようで変わらない景色に、友達の美しい声や、楽器ケースの色、雨の日の匂いを重ねる。 記憶は、景色と結びついてクリスマスツリーみたいにキラキラとぶら下がっている。宝石のごとく煌めく一瞬がレ…

宣言前夜

電車で隣に座っていた人が私から離れないでいてくれたときの、世界に許された感覚を忘れずに

2020

どこか、非日常であり続けている。 パソコンとしばらくにらめっこしていても、出てくるはずの言葉が出てこない。2020年はとにかく「言葉が足りていない」と思う一年だった。そして、意図的に情報を遮断することが多かった。 なんとなく、慣れてしまっている…

サクリファイス

小一で苗字が変わった友人を「魔法みたい」と形容したこと 教室は缶が似合うよこぼしてもハッピーだもん不合理ハッピー 昼休みカップ麺ばかり食っていた奴を本気で羨んでたこと 自由とは辛いものだと小三に教える夏の自由研究 書写の日に休むと休んだ証明が…

断片の輝き

以前、見ず知らずの高校生に対してオンラインで勉強を教えるバイトをしていたことがある。 生徒が分からないところの写真を撮って投稿し、教えられそうな講師が立候補して個別指導に入るというシステムだ。分からないところだけを迅速に解決できる、なかなか…

二周年

このブログを書き始めて今日で二年が経ちました! 最近は更新頻度が落ちていますが、色々終わったらまた書きたいなあ。よろしくお願いします!

アーカイブ

もう、インスタの投稿ぜんぶアーカイブにぶち込んじゃおっかな。 隣にいた若者が、夜の色を纏った電車の中で唐突にそう言った。 若者の友だちと思われる男は怪訝な顔をして、アーカイブとは何なのかと若者に尋ねた。見たところ若者より年上で、インスタの細…

ひとりでいること

ぼーっとしているときによく思い出す景色がある。 それは私が通っていた中学校への通学路の道中で、私がただひとり佇んでいる光景である。私の母校の中学の周りは土地の関係で坂道が多く、私が思い出す場所は、数々の下り坂の終点を結ぶ谷のようなところであ…

「社会不適合者」

新しい文章を書くことが出来なくなっていた。その理由は、近頃の急速な社会変動の中で、安易に言葉を書き連ねることが出来なくなっていたからというのと、ちょうどこの記事が私の書いた文章の100本目だからである。100本目に相応しいものを書こうという気概…

重力と花びら

矢印の根元を〈過去〉とみなしますそういうノリで人を見てます 改行のたびに呼吸がしづらくて文字にも重力があるんだな 正しさは怒りと同化 透過する自意識たちがどうかしていた ゆらゆらと燻る善が食い尽くし滅んでいった寓話のさわり 夏花火の度に探すチャ…

少しだけ早いバイバイ

私たちの世界の外からやってきたウイルスによって、突然日常が葬り去られた学生たちの声を聞いていると、日常の途方もないきらめきみたいなものを、感じずにはいられない。 いま、新型ウイルスの感染拡大を防ぐために、全国の学生たちには突然春休みが訪れて…

隣のホリデイ

日常を切り取るために捨てられたそのアーカイブを探すのが夢 なみなみと注いだ君がこぼしたら、隣でぎゅっと乾かしてやる 「ぽったり」と形容してた 2月末、いきなり暑い日の温もりを 生命はシンプルな手間で繋いでく ザクザクと切る折込クーポン 桃色がリア…

まっすぐに傷

スクロール 明滅してる起業家の刃渡り5kmの顔 新聞の裏で刺された血塗れの誰かは〈誰か〉であり続ける やさしさは他人の定規の上に立つ ミリ単位でも調整できる 5番線 黄色い線の内側でたまたま立っていただけと言う もう二度とオーダーメイドの憂鬱に触るな…

モラル・パニック・ユートピア

「先生、○○くんが□□ちゃんのことを無視しているんです」と生徒の一人が言った。 「それはよくないね。○○くん、何があったの?」先生は○○くんの方を向く。 彼は何も言わなかった。□□ちゃんのことを苦手に思っている彼は、何も言うことが出来なかった。無視を…

知人という貨幣

金をよこせよ、と送ってみた。送ったら満足したので、スマホを机に置いてまたパソコンに向かう。 自分の歳が無用にも積み重なっていくにつれて、机の上に平積みにされた年賀状の束が、年々厚みを失っていく。新年を祝うメッセージが電子化していくことに、僕…

高台からの強い言葉

人は、基本的に自分の経験から語ることしかできない。 そしてその経験が、自分が立っている足場が、どれくらい高いところにあるかを自覚することはとても難しい。 高いところにいると、自分の経験からこしらえた方程式を押し通しやすい。そのこと自体は誰し…

書くことは呼吸、だけど聞くことも呼吸

何か嫌なことがあったときに自分の気持ちをありのままに書いてみると、スッと気持ちが落ち着くときがある。 「言語化」による癒しの効果というのは絶大で、今まで自分が抱いていた気持ちがスルスルと言葉に変わっていくとき、ドンピシャの味のミックスジュー…

健やかな論理

「こういうことがあった辛くてたまらないもう死にたい死にたい死にたいって助走があるわけじゃなくて、ふと、なんか、別にもういっか、ってなる瞬間。」 先月発売された朝井リョウの最新作、『どうしても生きてる』という短編集の中の「健やかな論理」という…

ソーダ水槽と秋の夜

どしゃ降りの雨に打たれているとき、すごくちっぽけな世界が、途方もないくらい大きな世界に繋がっていることに、気がつくことがある。 守り抜いてきた小さな自分の世界が不意に壊され、耳をつんざくような雷鳴と身を凍えさすような寒風が、自分の心の隙間を…

僕もコーヒーが飲めたい

コーヒーが飲めるってズルいよな。なんでってなんかカッコいいじゃないですか。 例えばカフェに入って優雅に読書をするというわけのわからないことを僕も年に3,4回するわけだけど、そこでコーヒー頼んでみるのね。だけど本当に飲めねえんだわ。コーヒー好き…

今、その痛みは自分だけのもの

夕立が降った後の、街を丸ごと洗った匂いが満ち始める時間。日常の生活においてもそういった時間があるように思う。雨が全てを拭い去り舞い上がった空気の粒が光と輪郭を伴って空の中で大きく弾けるとき、頬には清新な風が吹きつける。まるで街全体に風穴を…

ハッシュタグと共犯者

朝ドラを見ているのだが、流石に伝統ある朝ドラと言うべきか、ツイッター上では番組に対する感想が多く飛び交っていて賛否両論が巻き起こることも多い。毎日少しずつストーリーが進むという放映形式も手伝って、朝ドラはたくさんの人々の日常の中にすっかり…

Slumber

この頃、現実的な夢ばかり見る。現実と夢の区別がつけられなくなってくる。 ヒューマンドラマを見る。昔からファンタジーよりも日常系が好きだったけど、歳をとるにつれてめちゃめちゃリアルな話を現実の自分となぞるのが好きになっていく。こんな愛を捧げら…

夜間移動と実況中継

個人的に考え事をするのに一番最適なタイミングは、深夜の照明が落とされた交通機関の中である。つまり夜行バスや飛行機が一番良い。比較的どこでも寝られる体質の私は、寝ている間に連れて帰ってくれる上に価格が安い夜行バスという移動手段を重宝している…

夏の終わりと31×6

あの雲が何に見えるか喩えてよ、お気の済むまで聞いているから 夕立が変えることなどない未来 奪い去るには足りないわたし 灰色が傷つけてきた雲の下 焦げついた陽と昼の葬列 どうしたって近づくことはない だから巻き込むことしかできないの、風 優しさも悪…

Fantôme

生と死の狭間をたゆたっていくように、境界をぼかしていくグラデーションのような陽射しの夏の日、迎え火のようにゆらゆらと揺れる街燈が墓標のごとく並ぶ午前3時。生き抜いた蝉の残骸が散らばっていて、蜃気楼に近い生命のうねりが押し寄せてくる。 半袖の…

一年が経ちました

このブログを始めて今日で一年が経ちました。正直一年も続けられると思ってなかったです。これからもゆるゆると続けていこうと思うので末永くご愛読いただければと思います!

痛みの分割払い

苦手ではないけど進んでやりたくもないことを重ねていくことは、結構心身を蝕んでいくものだと思う。 特段苦手なわけではないから、どうにかやれちゃう気がするし実際やれてしまうのだ。だけどそれをやっている自分を改めて見つめ直したときに、小さな違和感…

正しさがガラクタになるとき

このブログもおかげさまで一年くらい書いているが、書き始めた頃の記事にこういうものがある。 要約すると「理性が感性の領域へと侵食する危険性」について書いたもので、今読み返してみると初っ端から自分の思想ぶっ飛ばしてるなと思いながら、結局一年経っ…

引退

このような場を設けていただき、ありがとうございます。なかなかこうしてみんなの前で語る場面もないので、僕はHASCのみんなが大好きだということを伝えたいです。 広告とは話がズレるのですが、HASCの人たちは共感力と包容力、そして感受性が豊かな人が多い…