ノートの端っこ、ひこうき雲

ひと夏の思い出、には留まらせたくない。

またね

「またね」という別れの言葉がある。これから春が芽吹き始める。桃色のじゅうたんの上で、たくさんの「またね」が飛び交うのだろう。

「さよなら」だと寂しすぎるから、また会いたいと強く願うから、親しい人と交わされる、「またね」という約束。

 

僕たちは、この約束をどれだけ守ることが出来ただろうか。

 

そもそも、「またね」という言葉は何らかの気持ちの省略形である場合がほとんどだ。

 

「また眠れなくなったらお喋りしようね」、「またどうしようもなくバカみたいなことしようね」、「また夜の街を一緒に抜け出そうね」、「また思いっきり絶望しようね」……。

 

びっくり箱みたいな「またね」を沢山贈りたい。「またね」の蓋を開けてみたらこんなに沢山の気持ちが詰まっていただなんて、ってびっくりさせたいんだ。

 

一生蓋を開けられることなく、暗い箱の中で寂しそうな顔をする人形を、もうこれ以上増やしたくはない。

 

次は誰に「またね」をプレゼントしますか。