フランス・ドイツ周遊旅行記①〜国際線でわんこそば〜
20年間生きてきて、一度もやったことのないことがある。
それは、日本から旅立つことである。というか岡山県より西に行ったことがない。自分がどれだけちっぽけな場所で日々を送ってきたのかを感じるために、海外へと羽ばたくことにした。
海外デビューの場所として、第二外国語がフランス語だからという極めて単純な理由でフランス、そしてその隣のドイツに行くことにした。
同じくヨーロッパに行きたがっていた大学の友人と二人で、9泊11日のヨーロッパ旅行を決行した。その記録を残していきたい。情報量が多すぎた旅行なので、どれだけ長くなるか分からないけど、ゆるゆるとお付き合いください。
また、今後フランスやドイツに行きたいなーって人に向けて参考になるかもしれない情報も載せたいと思うので、よろしくお願いします。
1月22日
日本から旅立つ
さて、いきなり10時間以上飛行機に揺られることになる。長時間移動は青春18きっぷで慣れてるとはいえ、流石にこれほど長時間の拘束は経験したことがない。成田空港からパリのシャルル・ド・ゴール空港までの直通便だ。
離陸の際は、人生初の国際線へのワクワクが募った。無駄に焦らすような地上走行の後、軽やかに飛行機は飛び立った。ああ忘れ物をしていないだろうか。しばらくさよならだ。
乗客は日本人よりも外国人が多かった印象だ。キャビンアテンダントも日本人の方が2名、あとはフランス人の方だった。アナウンスも英語とフランス語と日本語でされる。微妙にフランス語が聞き取れてこの時は調子に乗っていた。
3人席に座ったが、友人の隣の席の人が現れないまま離陸した。ラッキー。
全ての座席にモニターが取り付けられており、映画や音楽を楽しむことが出来る。コナンくんを見れたのは非常に嬉しかった。飛行機内で執行された。
ボヘミアンラプソディにすっかり感化された私はクイーンのライブ映像も見た。
しばらく画面をいじっていると、わんこそばの早食い大会を中継した日本のテレビ番組を発見した。
これはどこ需要なのだろうか。多分この飛行機でこの番組を発見したのは俺だけだと思う。幸先がいいな。
機内食はメインが2回登場する。いきなり硬めのパンが登場して、フランスをフライングした形になるが、おいしかった。合間合間にスナックやアイスなども提供されて、満足度が高い。飛行機で出されるこういう食事が大好きなんだけど、分かる人いないかな。サービスエリアで食べるご飯とかプールサイドで食べるラーメンに近い感覚がある。伝われ。
11時間近くフライトしているわけだが、ひたすら西に向かっているので太陽の沈みに思い切り逆らう形になる。手元の腕時計は20時を過ぎていても未だに外が明るいのは不思議な感覚だった。
窓に少し雪っぽいものが付いている。目的地の気温の低さを否応なく感じる。
腰やふくらはぎが限界を感じていたころに着陸の案内があった。結局最後まで友人の隣の席の人は乗ってこなかった(当然である)。
ついに、ユーラシア大陸初上陸だ。
シャルル・ド・ゴール空港
着陸して窓の外を見た瞬間、この旅行の運命を悟った。
めちゃくちゃ雪が降っていた。
まあ1月だし日本より寒いはずなので覚悟はしていたがそれにしても一面の雪景色で、ロシアにでも着陸したんかと思った。
空港大好き芸人の私は異国の地の玄関には尚更テンションが上がる。が、空港の案内表示を見て「外国語しかねえ」と当たり前の感想を抱くくらいには時差ボケしていた。まだお外が明るいよ。
友人は僕より海外慣れしているので英語等のリスニングやコミュニケーションは一任していた。空港の人が分かれ道の前でなんか言っているが全く分からず困っていると、彼は迷わず突き進んでいった。
この旅行全体で感じたことだが、彼は一切後ろを見ずに止まらずに歩き続けるため、とろい俺との間には一緒に旅行しているとは思えないくらいの距離が空いていることがあった。しかしその決断力には何度も助けられた。
入国審査は極めて簡素なものだった。フランス人のおじさんが隣の同僚とお喋りしながら適当にパスポートにスタンプを押していた。俺のツラ見てないと思うんだよな。別人だったらどうすんの。しかもスタンプ押してくれたページ出国の時と全然違うページだし。そういう仕様なのか?
入国審査を終え、荷物がベルトコンベアで雑に登場する場所へ向かう。クソデカスーツケースを預けていたのだが、なかなか流れてこない。ロストバゲッジ(送り先を間違えたなどの理由で荷物がロストされること)されたら泣くなあと思いながらしばらく待っていたら、目印として付けていたスーツベルトがロストした変わり果てた姿のスーツケースが流れてきた。ベルトの留め方が悪かったらしく海を越える中で脱げてしまったっぽい。旅行物品紛失最速記録なんじゃねえかな。ちょいと出鼻をくじかれた。
パリへ移動
東京と成田空港の関係と同じように、パリとシャルル・ド・ゴール空港は離れているため、電車、バス、タクシーいずれかの手段でパリに向かう必要がある。後述する通り電車は治安が微妙なのでフランス慣れしていない内はオススメしない。今回はクソデカスーツケースを積めるバスを選択した。
さあ、チケットを買わなきゃいけないのだがフランスはカード社会と聞いていたのでカードで支払う。初めて異国の地で機械を動かす。緊張感と静電気が走る。凱旋門行きのバスを選択して、カードをぶち込む。そこまでは良かったものの、暗証番号の入力に失敗して機械がフリーズした。戻るボタンとかもない。結局どうしたらいいか分からず放置し、もう一個の機械で購入した。ソーリー。
さて、一度バスに目の前で無慈悲に発車されるというハプニングもあったものの、目当てのバスが無事到着。
ドイツもそうだけど、フランスは客と仕事人は対等という考え方なので、しっかりと挨拶をするのが望ましい。bonjour(こんにちは)とmerci(ありがとう)さえ言えればどうにかなる。
ボンジュールと言いながら車内に乗り込むと、「どこ行くんや」的なことを運転手に聞かれたので、フランス語を勉強してきた僕はイキってフランス語で「私たちは凱旋門に行くことを望む」と言ったものの、多分凱旋門(étoile)だけで通じたっぽい返答をされた。無情。
チケットは割としっかりした紙で、このバスに乗ればシャルル・ド・ゴール空港から凱旋門、エッフェル塔まで行けちゃう。我々の泊まるホテルは凱旋門近くの地下鉄に乗って行くため凱旋門で降りる。
さて、バスに揺られて数十分。街並みがパリっぽい様相を帯びてきてテンションが上がる。やっと周りが夜っぽくなってきてる。今日は本当に長い一日だ。
車窓から撮ったので画質の荒さは勘弁。そういえば車道は右側通行なんだよなと今更気付く。友人は隣で爆睡していた。
そしてバスが速度を落とし始め、アレが姿を現わす。
うおーわ!でかい!
大概こういう有名な建築物って思ってたよりコンパクトだなって印象を受けることも多いのだが、凱旋門はイメージを軽く超えてくるくらい大きかった。ナポレオンの強さを感じる。この凱旋門を中心に何本もの通りが星のように放射状に延びているから、エトワール(星)という名前がついている。その構造ゆえに凱旋門の周りはガンガン車が通る。ペーパードライバーの僕が運転したら間違いなく凱旋門を破壊するくらい運転が難しそう。
車の往来が激しいので凱旋門の真下に行くには地下道を通る必要がある。有料だが。
バスの運転手は我々が日本人だと気づいたらしく、「ありがと」と言ってくれた。かわいい。これから出会う人たちにも、「こんにちは」より「ありがとう」を言われることが多かった。日本語を代表する言葉ということなのだろうか。
凱旋門側から眺めるシャンゼリゼ通り。明日も通る予定だが、夜のパリの雰囲気に心が掻き立てられる。
パリの交通機関
パリは山手線の内側に収まるくらいの小さな街とよく言われるが、交通網が発達していて基本的にどこに行くにも困らない。メトロの他、バスヤトラム、RER(高速郊外鉄道)という電車も走っている。
特にメトロはあらゆる場所に張り巡らされているため、今回の旅行でも何回も利用した。
これらの交通機関に共通した「Ticket T+」というチケットを観光客は一般的に買う。一枚1.9ユーロだが、10枚綴りを買って友達とシェアするのがお得だと思う。
こういうチケット。
これ一枚で一時間半以内ならパリ市内どこまででも行ける。つまり一駅だけ乗るのも十数駅乗るのも同じ1.9ユーロなのだ。
こんなデザインの券売機で買う。カードで買える。硬貨や紙幣は受け付けないタイプの券売機もあるので注意。フランス語が分からなくても英語に変えることもできるので安心だ。
しかしこの機械なかなか曲者で途中から我々のカードを受け付けてくれなくなった。なんやねん。
メトロには番号が振られており、乗り換えの時も、その番号で向かいたい方向の駅名が書いてある表示に従っていけばいいので分かりやすい。迷うことはなかった。
パリのメトロ。扉が日本のより大きめでヤンキーみたいな閉まり方をする。そしてすごい頻度でやってくる。ほぼ二分に一回は来るので「逃しちまった」と思う間もなくやってくる。
駅構内は古き良きって感じで、あまりエスカレーターがないのに階段は多い上に無駄に移動させられるため、大きな荷物を運ぶ場合は注意。私はクソデカスーツケースを持ってヒイヒイ言いながら歩いていた。
ほぼメトロ移動だったので他の交通機関についてはあまり分からないが、RERはパリ市内とパリ郊外を繋ぐ電車で、RERのB線はシャルル・ド・ゴール空港にも繋がっており、空港から市内に向かう選択肢の一つになる。しかし、一般的にRERはあまり治安が良くないらしく、物乞いなども車内に出現するらしい上に、メトロに乗り換える時に階段がキツいため、バスやタクシーを使うことをオススメする。バスは僕らが乗った凱旋門、エッフェル塔行きのバス以外にもオペラ座行きのバスもある。タクシーはセーヌ川右岸なら全て均一料金なので無駄走りされる心配はない。
二つ星ホテルへ
メトロに乗ってホテルの最寄駅に向かう。
飛行機やホテルの手配は旅行会社に一任していたのだが、パリは二つ星ホテルを用意された。ホテルの星は、他国ではそれぞれのホテルが勝手に自称している場合も多いのだが、フランスだけは部屋の広さや設備などによって明確に基準が決まっているらしい。二つ星はあまり期待できるものではないと思いながら最寄駅を降りると、「夜の街」といった感じで毒々しい色のネオンがハートマークを描いていた。美しきシャンゼリゼ通りと同じ街にあるとは思えぬ感じで、治安が微妙だったため写真を撮っている暇もなかった。
ホテルは駅から近く、程なく到着。フロントはこじんまりとしているがお姉さんは愛想が良かった。
ところが突然「6ユーロを現金でよこせ」と言い出し始める。お金はもう払っているはずなのに何のことかと思ったら宿泊税のことだった。びっくりしたわ。注意してね。
部屋の鍵を渡され、階段をスーツケースを持って登っていくと真っ暗。人いるのかこれ。
お姉さんはエレベーターがあるのでそれで登ってね的なことを言っていたのだが、何処にも見当たらない。しばらく呆然としているとお姉さんがやってきて「階段の途中にある」と教えてくれた。
しかし、このエレベーターのクセがすごかった。
まず階段の途中にあるのが意味不明だし狭いから非常に乗り込みにくい。エレベーター自体の扉に加え、手動で開ける扉の二重構造になっている。とにかく移動しづらい。何でここに置いたのか小一時間問いただしたいが、お姉さんを責めても仕方があるまい。
エレベーター内部の写真。階段の途中にあるので階数表示も「2/3」というようになっている。
ようやっとの思いで部屋に到着する。部屋は小さめだったがまあ仕方あるまい。
この写真の奥にあるヒーターらしきものはヒーターと呼べるものではない微熱を発するモニュメントに過ぎなかった。
もう疲れ切っていたので、夕飯はホテルの近くでジャンキーなものでも食べようぜというよく分からない発想の下、ジャンキーそうな赤い壁に肉肉しい写真が貼り付けられた個人経営っぽい店があったので侵入する。初めての現地飯だ。
中では常連さんらしきおじさんが山盛りのポテトを喰らいながらこちらを見つめる。店主はノリが良い人で機械を駆使しながら色々焼いていた。
壁にかけられたメニューの情報量が多すぎて困ったので、とりあえず一番下に書いてあったやつを指差しで注文。
ケチャップの偏りが気になるが、いい感じにジャンキーで良かったです。味とかはあまり覚えてないけどなんか濃かったのは覚えてる。
こうして長い長い一日が終わった。
明日はシャンゼリゼ通りを歩きながらパリの王道ルートを歩む予定だ。華やかになりそうねと期待していたが、最大級の危機が我々の身に迫ることになる。
続きは次回。綺麗な写真がようやくお届けできると思います。二つ星ホテルの伝説もまだまだ続きます。