フランス・ドイツ周遊旅行記③〜迷宮のルーヴル美術館〜
前回
シリーズ第一回
迷宮のルーヴル美術館
スリ集団をタックル気味にかわし、ルーヴル美術館に侵入する入口を探す。これがなかなか見つからない。
少しウロウロしていると、とても有名なルーヴル・ピラミッドが見えてきた。ランドマーク的存在であると同時に、これがルーヴルの入口となっているのだ。1月という閑散期に行ったものの、それでもピラミッドの前には長蛇の列。これが4〜10月というピーク時ならどうなっているのだろう。僕らはかろうじて現地に買うのに耐えられる待ち時間だったが、事前にチケットを購入しておくことをオススメする。
入口ではX線も設置されている空港ばりの手荷物検査があり、エスカレーターで地下に潜り込むように入る。空港でもそうなのだが私はこういった類の手荷物検査でやたら慌ててしまうので、今回も不審者みたいな挙動を呈しながら金属探知ゲートを通過していった。
エスカレーターを下ると広々としたエントランスホールが広がっている。写真を撮り忘れたので文章で表現するしかないんだけど、四方八方にチケット売り場や美術館への入口、レストラン、売店、出口が広がっていて、想像以上に現代的で開放的なデザインになっていた。
これはルーヴル美術館の公式サイトに載っている館内図だが、ルーヴル美術館はこのように「リシュリュー翼」、「シュリー翼」、「ドゥノン翼」という3つのエリアがU字状に並んでおり、それぞれの展示室も繋がっている部分と繋がっていない部分があって、非常に迷宮度が高い。我々も何度もこの迷宮っぷりに翻弄されることになる。
これは一番迷宮度の高い1階の館内図である。1階のドゥノン翼は「モナリザ」や「サモトラケのニケ」、「民衆を導く自由の女神」といった有名作品が集結しているエリアなので、時間のない人でもここだけは押さえておきたい。
73,000平方メートル超えの敷地の中に35,000点もの作品が展示されている上にこの迷宮っぷりであるため、すべての作品をじっくり見て回るには丸3日かかると言われている。
我々は出来るだけ欲張りに網羅するという無茶すぎるプランを立てていたので、6時間ほどでほぼすべてのエリアをぐるぐる回っていった。その記録を写真を中心に残していきたい。
地下2階にある軽食屋でパンを買ってエネルギーを補給。
まずは、リシュリュー翼地下1階と地上階にある、彫刻や古代オリエント、古代エジプトを中心としたエリアを回っていく。私は古代の芸術作品は全くと言っていいほど無知なのであまり写真を撮っていない上に作品名も分からないんだけど許してください。
リシュリュー翼に入るとこれ自体が芸術的と呼べるような広がりを持った空間が我々の目を楽しませた。白を基調とした空間の中に数々の彫刻作品が展示されている。
それぞれの展示室の中に入ると古代オリエントやエジプトの作品が展示されている。
とても顔色が悪そうだ。
非常に細かいところまで作りこまれていて驚く。
手。
続いて1階に上るとヨーロッパの装飾美術コーナーになり、空間の輝きが一気に色とりどりになる。
特に目を奪われるのは「ナポレオン3世のアパルトマン」。豪華絢爛なこの空間にて実際にナポレオン3世が生活していたというのだから驚きだ。
ナポレオン3世本人も登場。絵画の大きさも半端でない。私が並んでも額縁にすら達さないくらいの大きさ。
やっぱりこの美術館は迷宮だが、展示室以外の造りも素晴らしい。
小物も多く展示されていた。
目眩くばかりの天井画。
有名作品が集結している1階のドゥノン翼に向かう途中の階段の踊り場で、「サモトラケのニケ」が我々を出迎える。ヘレニズム時代の貴重な彫像の一つで、勝利の女神ニーケーを表現している。スポーツ商品メーカーのナイキ(Nike)の社名はもちろん、あのロゴマークもこの彫像の翼がモチーフになっている。
そしてひときわ人集りが出来ていたのはやっぱりこの方。元々小さめな絵画である上に、人混みがすごくてまともに写真に収めることができない。モナリザの前ではスリが多発しているらしいので注意。
1830年のフランス7月革命を主題にした「民衆を導く自由の女神」。私が特に好きな絵画の一つであり、しばらく見惚れてしまった。
聖書をモチーフに、ヴェネツィアを舞台に置き換えた、聖と俗が融合された作品「カナの婚礼」は特に大きな絵画である。高さが6.8メートル、幅が9.9メートルもあるそうだ。
フィリップ・ド・シャンパーニュが描いた「最後の晩餐」。これを機に調べてみたら予想以上に「最後の晩餐」というタイトルの絵画は多い。Wikipediaに記事がある作品だけでも12作品ある。いつかミラノに行ってレオナルド・ダ・ヴィンチのバージョンも見てみたい。
しかし、いかんせん作品数が膨大で次第に脳がパンクし始める。確かにじっくり味わいながらすべての作品を見るのは一日じゃ無理ですな。早足で沢山の作品を流し見するという贅沢な行動に出始める。
ここらへんの絵の色使いがとても好きなのだけど、誰かタイトルがわかる人いますか。絵の中の「主題色」がはっきりしている作品が好きなのかもしれないな。
他にもイスラム美術のコーナーや中世ルーヴルのコーナーも回る。脚がかなり疲弊し始める。美術館で脚が疲れたの初めてだよ。
シュリー翼の地下には、12世紀に城砦として築かれたルーヴルの遺構が残されている。
なんか見るの忘れてね?と終盤に訪れたのがこちら。
「ミロのヴィーナス」
これで超有名作品は回り切れただろうか。
出口の近くにはお土産ショップがあり、地上のルーヴルピラミッドと対になる「ルーヴル・逆ピラミッド」が存在感を放っている。
数枚の写真では到底紹介し切れないような広大で魅力的な美術館なので、パリに訪れた際は必ず足を運びたい場所だ。部屋が行き止まりになっていたり上手く通れなかったりするその迷宮っぷりに翻弄されるといい。めちゃくちゃ疲れた。
転売ヤーとエッフェル塔
ルーヴル美術館の地下に直結している駅からメトロに乗り込み、パリの最後の目的地であるエッフェル塔に向かう。本当に贅沢な行程だ。
自動券売機の近くには「チケット売ってるぜ」と全員に声をかける男がいた。みんな無視していたが、券売機の近くに「高いし使えるか分かんないから売人からチケットを買うなよ」的な注意広告がデカデカと貼られていた。その広告の目の前で売るとは、なかなか肝の据わった男である。
メトロに数分揺られてエッフェル塔の最寄駅「Trocadéro」に到着。
ちょうど良い時間に撮影できて、エッフェル塔のてっぺんから光が放たれている神々しい写真が撮影できた。エッフェル塔の真下に行って登るのも考えたが、流石に疲れ切っていたため、遠くから眺めるのにとどまった。
このまま夕飯を食べようとTrocadéro駅の近くで探すと、「le wilson」というお手頃な価格のカフェが目に入ったので入店。観光客で賑わっていた。前菜とメインとデザートが付いてくるコースを頼んだ。やっとフランスっぽいご飯を食べている気がする。
パンは当然のように机上のカゴに置かれる。料理が来るまでこれでも食べてな的な意味だろうか。ちなみに水はちゃんと「water」と頼まないと持ってこないので注意。
綺麗に盛られた前菜。卵が美味しかった。
メインの「steak with shallot sause」。シャロットは西洋料理の香味野菜としてよく使われるらしい。
昨日のジャンクディナーもそうだが、ポテトの量が微妙に多い。そして肉は固くてナイフで切るのが難しかった。友人はナイフとフォークの使い方に慣れているためレクチャーしてもらった。今回の旅行で間違いなく上達したのはナイフの使い方だと思う。
パリジャンのアイスらしい。ぶっちゃけこれが一番美味かった。
二つ星ホテル改めゼロ星ホテル
今日はパリを回ったもののどこに行ってもパトカーの音が聞こえる。決して安全な街とは言えないなと思いながら毒々しいネオンが光る駅の二つ星ホテルに戻る。
疲れたからさっさと寝ようと部屋に戻ると衝撃の光景が広がっていた。
ベッドメイキングがされていない。俺らが朝に部屋を出たままである。メイクするの忘れてたのかな、まあそれくらいなら許すわとバスルームに入ると更に衝撃が走った。
替えてくれよとシャワーの下に置いておいたタオルで何故か床が拭かれており、汚れた状態で床に放置されたままだった。これは従業員が部屋に「入り忘れた」のではない。ただ「改悪」されただけだ。だって俺らはタオルで床拭いてないもん。なんなんだよ一体。そしてタオルについているこの茶色い汚れはなんなんだ。このタオルで体が拭けるわけない。
流石に温厚な俺でもブチ切れるレベルの対応だったが二人で笑った。笑うしかなかった。スリにも会うし部屋は改悪されるし踏んだり蹴ったりな一日だった。このせいで我々のパリへのイメージが低くなったのはもう仕方ないことなのだ。今後の旅行でも再三パリとか二つ星ホテルはdisられる対象になるのである。
微妙な気持ちでシャワーを浴びるも、ぬるい温度のお湯しか出てこない。微妙に風邪をひきそうな。先に入った友人は特に騒いでいなかったので、ちょっと入るのが遅くなったのが原因だろうか。僕はもう無の境地に達した仏のような顔でシャワーを浴び続けた。仏国だけに。そして今後の旅の幸福と無事を心から願った。