フランス・ドイツ周遊旅行記④〜雪原と化したヴェルサイユ〜
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シリーズ第一回
1月24日
パリを脱出
凱旋門からルーヴル、エッフェル塔と昨日はパリを網羅して疲れてよく寝た。今日はパリから少し足を伸ばしてヴェルサイユ宮殿に向かう。
またパンが三種類だけ登場する昨日と全く同じ朝ごはんを食べる。昨日はなかったコーンフレークが登場した。もしかしてだんだんグレードアップするシステムなのだろうか。
昨日朝食について教えてくれた若い日本人の姉ちゃん二人組が今日もやってきた。顔なじみになっていた僕らは軽く挨拶をする。ベッドメイクをしてくれず僕らのタオルを改悪してくるこのホテルにも日本人が泊まっているという事実だけが僕らを支えてくれる。
友人はまた姉ちゃん二人の会話を盗み聞きしたらしく、ヴェルサイユ宮殿という単語が聞こえたらしい。なんと昨日に引き続き目的地が一致していた。これはすごいな。
ヴェルサイユ宮殿はパリの郊外、イヴリーヌ県ヴェルサイユにある。
RER(高速郊外鉄道)というパリ市内とパリ郊外を結ぶ電車は①でも書いた通り治安が少し心配であるため、今回はフランス国鉄(SNCF)を利用した。おなじみのゼロ星ホテルの最寄駅Blanche駅からパリの主要なターミナル駅であるGare Saint Lazare(サン・ラザール駅)までメトロに行き、そこからフランス国鉄に乗る。
メトロも乗り慣れたものだが、高くそびえる改札をひょいと飛び越えて行く人が居てびっくりした。無賃乗車なのだろう。
サン・ラザール駅はかなり大きめな駅で、国鉄の券売機を探すのにも苦労した。入るのに改札がなかったため、これは買わずに行けるんじゃね?とも思ったけど改札を飛び越えて行く人ほどの勇気がないため券売機を探し求める。
ようやく見つけた券売機にて若い女性二人組が操作をしていた。あれ?この人たちもしかして…
そう、同じホテルに泊まっていた姉ちゃん二人組だったのである。偶然にも程があるぜ。姉ちゃんたちは僕らに気づいて挨拶しながら、「クレジットカードを上手く使えなくて困ってます」と言っていた。我々もよく分からなかったため、彼女らは巧みな英語で通行人に質問していた。僕らは「すげえ」とほざくしかなかった。
姉ちゃんたちは切符を購入して颯爽と去っていった。多分同じ電車なんだろうな。ちょっと一緒に行きたい気持ちもあるけど、流石にね。
フランス国鉄の車内の雰囲気は確かにメトロよりも良く、走っていく途中で照明が何やらあたたかなオレンジ色やエロティックな紫色など次々に変わっていった印象が強かった。パリピみてえな電車でちょっと笑っちゃった。
終点のVersailles-Rive Droite(ヴェルサイユ・リヴ・ドロワ駅)まで数十分揺られる。明らかに外の街並みが変わっていくのが分かる。
改札を出るとき切符がちゃんと必要だったし監視員もいた。よかったちゃんと買っといて。
駅からは20分ほど歩く。少し遠いが、歩いてよかったと思えるくらい雰囲気のいい街並みが続く。この素朴な感じはパリより好きかもしれない。スリいなさそうだし。
雪がいい仕事をしている。PVに出てきそうなくらい素敵な道だ。
少し歩くとかなり大きい建物が見えてくる。これが広大なヴェルサイユ宮殿だ。大きすぎて全体像を上手く写真に収められない。
門扉の装飾も凝っている。
宮殿内を見学
宮殿に侵入を試みるが、入口がどこか分からず微妙に悪戦苦闘。ここでも荷物検査が実施される。X線はなくてもやはり防犯はかなり徹底されている。
ヴェルサイユ宮殿はルーヴルと異なり、見学の順路がある程度決まっているので迷子になる心配はない。
ルーヴルで目が肥えていたのにも関わらず、実際に王や貴族たちが居住していた空間は圧倒的な存在感を持って我々の前に現れる。
礼拝堂。こちらでルイ16世とマリー・アントワネットの婚礼が行われた。パイプオルガンが確認できる。
長い長い廊下。多数の彫像が我々を出迎える。コツコツ足音を立てながらこの廊下を早足で歩いていると、なんか偉い人になった気分だ。
ヘラクレスの間。天井画はルイ14歳時代の最高傑作と言われている。このだだっ広い部屋も居室として使われていたというのだから驚きだ。
マルスの間。舞踏会が行われていた部屋らしい。赤と金色を基調とした装飾が印象的。
メルクリウスの間。
戦争の間。またまた豪華な部屋だ。奥の方に見えているのがヴェルサイユ宮殿で一番有名なあの部屋だ。
鏡の間である。流石にメインの部屋なだけに豪華さが段違いでしばらく見惚れてしまった。ルイ14世の権力の強大さを感じさせる場であると同時に、普仏戦争に勝利したドイツ帝国皇帝の戴冠式や、この屈辱への報復として第一次世界大戦後にヴェルサイユ条約が調印された場もここである。様々な歴史上の重大イベントがこの部屋で繰り広げられた。
当時は電灯など存在しないため、夜に宴会などが開かれる場合は、ゆうに3000本もの蝋燭に火がつけられていたと言われている。大変すぎだろ。
鏡の間を抜けると王の寝室がある。
こんな豪華な部屋でルイ14世はちゃんと寝られていたのだろうか。でも流石は寝室、天井画などは描かれていなく、白くシンプルな天井となっている。
有名な「ナポレオンの戴冠式」の絵画。ルーヴルにもあるのだが何故か写真が残っていなかったためこちらで載せる。
戦闘の回廊。ヴェルサイユ宮殿で一番大きい部屋で、ルイ=フィリップ王によって作られた。壁に掛けられている絵画はフランスの歴史の中で重要だとされる戦いを描いたものが揃っている。
あの方も出迎えてくれた。
さて、一通り宮殿内の見学が終わると、宮殿内にはお土産コーナーもある。ここでしばらくお土産を物色していると、またあの二人と奇跡の再会を果たした。
そう、同じゼロ星ホテルに泊まっていて駅の券売機でも出会った日本人女性二人組である。聞き慣れた声の関西弁が耳に入って思わず振り向くと目が合ったので挨拶をした。なんか、世界って狭いんだなあ。
少し話をした。彼女たちは関西の大学生で、卒業旅行でヨーロッパを周遊しており、オランダ、ベルギーと巡ってきて、フランス、そして明日からイギリスに行くらしい。すごすぎる。
ゼロ星ホテルについての話もした。毒々しいネオンが印象的な最寄駅については、「行ったことないですけど新宿の歌舞伎町みたいですよね」という名言を残してくれた。行ったことないのに「歌舞伎町っぽい」って思わせるの流石だな。
しかし、彼女たちの部屋はベッドメイキングされていてタオルも替えられていたらしい。
はーい差別!クソホテル!
明日からイギリスに行くとなると、もう彼女たちに会うこともないのだろうなあ、と一期一会を感じつつ、彼女たちと別れを告げた。
広すぎる庭園
かなり広く思えた宮殿だが、ヴェルサイユ宮殿の敷地の全体図を参照すると、ヴェルサイユ宮殿は下の方に見えている建物にすぎない。
いや庭園広すぎ。
地図の右上の方に見えるのがもう一つの宮殿であるトリアノン宮殿。ここまで我々は徒歩で行くことを決意した。
まあゆーて庭園だし緑を楽しみながら歩いてればすぐだろうと思ったかもしれないが、思い出してほしい、この旅行をしたのは1月だ。
白い。
スキー場かな?
というわけで我々はひたすら雪原と化したヴェルサイユの庭園を歩いていくことになる。代わり映えのしない写真が続くがご容赦ください。
泉の水も当然凍っている。それでもなお美しい。春や夏には噴水ショーが行われてるらしいですよ。そんなディズニーみたいな場面が想像できないのだけど。
森に入っていく。
森の中にコテージみたいな店構えの軽食屋があったのでここで昼食を取る。なかなかノリの良いおじさんが居た。チップをくれと言わんばかりの紙コップにお釣りの小銭を入れてあげた。
写真がないし、何を食べたか覚えてないくらい既に疲れている。
遠近法の極みみたいな道。ずっと奥に小さく見える建物まで歩いていくらしい。歩けど歩けど景色は変わらぬ。我々はやけくそになり庭園で熱唱し始める。
しかし建物に近づいてみてわかった。
あれはトリアノン宮殿じゃねえ。ただの門だ。
来た道を引き返す。やけくそだ。途中で現地の人らしき女性に心配そうに話しかけられた。
やけくそになりながらも到着。トリアノン宮殿は「大」と「小」の二つがある。こう書くとトイレみたいだがどう表現したら良いかわからん。
まず我々は「小トリアノン宮殿」に向かう。ルイ15世の公妾であるポンパドゥール夫人のために建てられたものだが、完成した時には既に夫人はこの世にいなかった。
宮殿はマリーアントワネットに与えられる。彼女は一人で静かに風情を楽しみ、宮殿で最も愛した場所と言われている。
可愛い中庭が印象的。
内装はシンプルで本当に王妃が住んでいたのか、と思うほど。あまり煌びやかな場所にずっと居続けるとシンプルを欲するようになるのかもね。
ビリヤード台も置いてあった。
続いて大トリアノン宮殿に向かいたかったのだが微妙に迷子になる。
だいぶ奥まった場所に来てしまったような気がする。
なぜか羊さん達がいた。ここもう絶対観光客が訪れるような場所じゃないでしょう。普通に飼い主みたいな人が現れた。
雰囲気が一変する。ジブリ映画みたいな景色だな。
やっと大トリアノン宮殿を発見。
大トリアノン宮殿は、ルイ14世が堅苦しいヴェルサイユ宮殿での生活から逃れ、公妾モンテスパン夫人と過ごすために建てられた離宮である。上の写真は「鏡の間」と呼ばれる場所で、離宮にもあったというのは初耳だ。光が効果的に取り入れられていて美しい。
部屋の色使いが好きだな。優雅で目が楽しい。
さて、二つのトリアノン宮殿も堪能したところで、そろそろヴェルサイユ宮殿を後にしようと思うのだが、駅に戻るまでは当然、来た道を引き返さないとならぬ。
脚が悲鳴をあげる。
果てしなく長い道を歩き続ける。なんで俺雪靴で来なかったのだろう。ちょうどこの記事はスキー旅行の帰り道で書いてるんだけど、スキー板履いて一気に滑っていきたいくらい長い道だった。
途中から思考停止して「あの姉ちゃん達に会いてえ」と538回くらい二人で連呼した。でももう会うことはなかった。また日本で会えたりしないかな。もう顔を忘れ始めているのだけど。
そうこう言っているうちに入口に到着。晴れ間が見えてきてなかなかカッコいい写真が撮れた。
やっぱりヴェルサイユ宮殿周辺の街並みは好きだな。
電車でパリに引き返す。座席に座った瞬間に予想を遥かに超える脚の痛みを感じる。パリに着いた時にはもうギャグみたいな歩き方しか出来なかった。
その脚を引き摺りながら、友人が目当てだと言っていた紅茶屋に向かう。紅茶のいい香りが漂う温かみのある店内の雰囲気で少し癒される。しかし疲れ切っていて写真は撮っていない。
パリの裏道。
この後もデパートを物色したり夕飯としてパン屋に入ったりしたが一度もスリには遭遇しなかった。パン屋の店員の愛想は悪いが金は盗られなかった。
ホテルに戻って感動した。ベッドメイキングがされている。タオルが替えられている。昨日はただのミスだったのか。こんな当たり前のことに感動していた。
少し、パリを見直したかな。まあ、もうパリはさよならなんだけど。