ノートの端っこ、ひこうき雲

ひと夏の思い出、には留まらせたくない。

ぶっ壊れない夜のために

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中途半端な時間に目覚めて、まだ夜明けまで意外に時間があって、明日は休日だからいいか、とそのまま夜を貪るように起きている時間が好きだ。ただ夜更かしをしているときとは違って、もう寝なくてもいいんじゃねーの、みたいな無敵感が心地よくて。

誰に連絡を取ろうともどうせ寝ているだろう、と携帯を放り出して、とりあえずお湯を沸かして「ほっとゆず・かりん」を飲む。たまにあたたかいカルピスも飲む。お腹の中でやさしい味が満たされていく。この季節になると、あたたかいものを飲むだけで世界一幸福な気分になれる。だから冬が好きだ。

よく夜中に近くの公園まで裸足で散歩してしまうと豪語していた友人は、俺がたまに電話をかけてもちっとも出てきやしないくせに、向こうから急にかけてくる。適当に互いの近況をしゃべっている間に勝手に寝るわと言って沈黙の時間が蘇る。多分一番夜を楽しんでいる類の人間だ。

夜中に電話をかけてくるなんて急にどうしたんだろって思わせながら、いきなり夜に一人で戻ることができる。距離感の取り方がプロレベルである。彼はちゃんと一人で夜を楽しむことができる。俺はできない側の人間である。

カルピスを飲んだ後に何をすればいいかなって、本を手に取って数ページ読み進めるうちに、SNSを開いて誰かが起きていることを確認する。確認するだけであり、こっちから連絡を送れるような勇気はない。

 

夜というのはこういう風に寂しいもので、でもなんだか素直になれないものだ。寂しさと向き合うために、夜という時間が用意されたのではないかとも思ってしまう。

だから、夜に何かを考えても悩みすぎてしまうだけだ。

大抵、どうにかなるのである。

がんばりすぎてしまう人は、寂しくない夜を求めてより寂しくなってしまう。

空が暗くなったら基本的に何もできなくなった時代はとうに過ぎて、明かりの下ではいつでも活動することができる。

それでもやっぱり、夜に何かをすることは、昼とは根本的に違うものなのだと思う。しんどいことは、夜には向いていない。

だから、嫌なことからはちゃんと逃げよう。悲しくなったら寝てしまえばいいし、ちゃんと誰かに連絡を取ればいいし、それもできなければもう散歩でもすればいいし。どんどん思いつめて頭を抱えるなんて、自壊行為に近い。

夜だからって、皆の前で、ましてやSNSで、ぶっ壊れる必要はないのだ。自分一人が、一番夜を幸福に過ごしている。幸せとはこう思えることだ。あなたが一番幸せになることが、世界の義務だし、大人の掟だ。